コパに参加できない・参加したいこれだけの理由

日本サッカー協会(JFA)が「2015年のコパ・アメリカから招待されたが出場が難しい」という見解を出している(結論は11月)。この点について、かなり誤解も多いようなので、少し説明する。

コパ・アメリカに参加できない理由

他大陸の大会なので(特に欧州組の)召集権がない

まず基本的な事項として、南米選手権はよその大陸の大会であるため日本が参加する便宜は図られておらず、クラブに対して代表派遣を要請する召集権がない。Jリーグから選抜するのであれば東アジアカップのようにJリーグと調整して予定をあける方法もあるが、少なくとも海外組は呼ぶことができない。

報道では“協会関係者“が「大陸別選手権への拘束力は同一年度に1大会のみ」であると説明しており、これをもって「アジアカップを辞退して南米選手権に参加すればいい」といった意見もあるが、これも無茶だろう。なぜならば、FIFAは所属大陸連盟の大陸カップに「全力で参加するべき公式戦」としての地位を与えているのに対し、他大陸連盟の大会のゲスト参加は親善試合と見なしているからである。FIFAランキングの計算時には公式戦と親善試合では重みが異なるが、過去の南米選手権でゲスト参加した国は、いずれも親善試合の係数をつけられており、FIFA公式にそう認めている。大陸カップにAマッチデー外でありながら召集権を与えているのはそれが“公式戦”だからであり、南米選手権ゲスト参加は“公式戦”ではないのだから原則としては“公式戦”に与えられる召集権もないと考えるのが妥当だろう。大陸大会は1年1回まで、という規制は2年に1回(2012・2013には連続で)やっているアフリカネイションズカップなどを意識した規制であり、南米選手権へのゲスト参加はレギュレーションの想定外になっているに過ぎない。原則論から言えば越境参加は拘束力のない任意参加であり、クラブ側は契約違反だとして訴えることは可能だろう。6月前後での降格プレーオフの発生や、南米選手権での怪我が原因で所属クラブとJFAが揉めたときに「アジアカップに召集しない代わりに南米選手権に召集する」という言い分が通る可能性はかなり低いと思われる。

また、アジアカップは適当でいいとか辞退していいというのは見通しが甘い。なぜならアジアカップで3位以内にならないと予選が免除されないからである。もし日本が2011年アジアカップで3位以内に入っていなかった場合、最終予選前後の親善試合にアジアカップ予選が入り、最終予選後も10月・11月に予定されているオランダ・ベルギーなどとの試合のカレンダーにはアジアカップ予選が入っていたはずである(日本も2010年W杯予選の直前2009年と2010年にアジアカップ予選を戦っている)。アジアカップで手を抜くと、W杯直前で強豪と手合わせする貴重な機会を失うのである。またこれだけ強豪と手合わせできるのも「アジア王者」の冠あってこそである。11月に対戦するベルギーは「アジアの中から1カ国」という条件で対戦相手を探していたようであり、その中からアジア王者を選んでいる。もしアジアカップを落としていたのなら、この枠はそのアジア王者が取っていった可能性が高い。

CONMEBOLはU代表なら拒否と言っている

フル代表を送るのが無理なら“代表2軍”を送れ、あるいは強化のためにU代表を送れと言った意見も見る。しかし、それは無理である。記事によっては「失礼にあたる」と抜き書きされているの で勘違いしている人が多いが、「JFA側の伺いに対してCONMEBOL側は南米連盟は『世代別代表(の派遣)はやめてほしい』ということだった」「一軍をよこせ」とはっきりと言っている。実際、前回の南米選手権にメキシコがU-23代表を送った際には相当な拒否を示している。

ただ、これには南米連盟側にも問題があり、FIFAの規定でもう連盟外からフル代表を召集することができないのが分かっているのにもかかわらず、昔のまま2カ国ゲストを呼ぶ方針を続け、しかもフル代表で来るように要求しているという矛盾含みの行動をしている。これがあまりにも矛盾だらけなのは明らかで、かつてポルトガルやスペインなど南米の旧宗主国をゲストとして呼ぼうとしたときにはすげなく断られている。

Jは協議のうえ調整が可能だが、カレンダー的には破綻している

先述したとおり、Jリーグと調整して予定をあける方法もあり、東アジアカップでは実際に行っている。しかし南米選手権に参加するとなると簡単ではない。まず基本的な事実として、Jリーグのカレンダーは相当きつく埋まっており、簡単には延期できない。18チームによるリーグ戦(34試合)のほか、オープン杯(天皇杯=最大6試合)、リーグ杯(ナビスコ=ACL出場で最小2、最大6試合)、国際カップ(ACL=最小6、最大14試合)が入っており、規模は世界一過酷な部類に入るプレミアリーグに匹敵する。加えて同年にはアジアカップ(6試合、約1カ月)と通常のAマッチデー(5週間10試合)、五輪予選がある。仮にこの全大会でフル出場して優勝した場合、年間の試合数は74となり、2か月オフを取れば毎週2試合ペースという極めて過酷なスケジュールとなる。南米選手権は最大7試合、地球の裏への移動日を含めればぶっつけ本番でも4週間は消費する大会であり、これだけの規模でカレンダーを空けるのは難しい。東アジアカップの1週間拘束と比べれば量的に比較にならない。もし参加したとしても選手はかなり低パフォーマンスを強いられるだろう。そもそも、Aマッチデーや召集拘束権という概念はUEFA(傘下のクラブ)とFIFAの交渉の結果できた物であり、欧州リーグ並みの日程を組むと2大会は参加できない程度に調整されたものである。

またカレンダーを簡単には動かせない理由として、Jリーグの財政状況も挙げなければならない。たいへん評判の悪い2ステージ+プレーオフ制度がほとんど話し合われる間もなく決定されたが、これだけ短期間に決まった一つの理由はスポンサーがいくつか撤退して急に財政状況が悪化したからだと言われれている。すでに具体的な会社も1つ判明している。Jリーグ全体のスポンサーを務め、ヴァンフォーレ甲府とベガルタ仙台のスポンサーでもある東京エレクトロンがアメリカの企業と合併しオランダに本社を置く外資企業となることが発表された。Jリーグのスポンサーは国内企業に限られるという規定があるため、このままいけばスポンサーは降りざるを得ない。財政的には少しショックの大きい年であるため、真冬までカレンダーをずらすようなことは避けたいところである。

コパ・アメリカにに参加したい理由

強化目的に有効である

これは言うまでもないことだが、レベルの高い相手と戦って何が足りないか経験し、それを強化目標・練習メニューに反映させることは日本サッカー全体を強化するうえで重要だろう。日本サッカーは(ヨーロッパやアフリカにそこそこ勝てているのに対し)南米サッカーを特に苦手としており、強化試合を行う相手としては特に望ましい。

J人気を保つ上でコパが有効である

前回のエントリにも書いたが、クラブ人気が代表人気を上回るのは各国代表を集めた欧州5大リーグくらいであり、そのほかの国ではリーグオールスターである代表のほうが人気があり、メディア露出も圧倒的に多い。その結果として、代表を輩出すると国内クラブの人気度が上がるという傾向がある。それが顕著に表れた例として、東アジアカップに柿谷が代表選出されたことでセレッソの人気が急激に上がったことが挙げられるだろう。Jの人気向上のためには国内組をなるべく代表に送り込んだほうがよい。その意味で、欧州組が呼びにくい召集権のない大会は、Jリーグから代表を送り出しメディア露出を増やす大チャンスであると言える。

南米選手権にどうしても出たいなら

ここまでで説明した通り、南米選手権に参加するには選手が労働契約を結んでいるクラブを相手に交渉してズル休みさせる必要があり、そのためにはクラブ側に何らかの見返りを提示することが必要になるだろう。以下、自分がJFAに勤めていて、もしどうしてもコパアメリカに出させろと命令されたら、以下のような交渉を行うだろうという妄想を垂れ流しにする。繰り返しますが「どうしてもコパアメリカに出させろと命令されたこういう行動をするという妄想」です。大事なことなので二度言いました(古い?)

海外クラブ相手の交渉

海外リーグ所属の選手については、リーグ全体で日程を調整するといった措置が不可能であり、またFIFA/UEFAの基準に則って召集することも困難であるから、個別に交渉することになる。ただ糸口がないわけではない。アジアカップが開かれる1月は欧州クラブにとってはシーズン中であり、その期間選手がいなくなるのは痛い。それに比べれば、欧州にとってオフシーズンとなる6月に開催される南米選手権のほうが、クラブにとっては負担が少なくなるだろう。南米選手権に帯同させる見返りとしてアジアカップへの召集を見送る、という取り引きは成立する可能性がないわけではない。ただしこれはアジアカップに呼ばなくてもいいメンバーに限られる。

国内クラブ相手の交渉

一方で、国内クラブは6月はシーズン中にあたる。前述したように現在のJリーグ・ACLの日程は隙間がないほど埋まっており、ここにアジアカップと五輪予選が入るため、最低3試合最大7試合のカレンダーを空けることは困難である。このため、もし南米選手権に選手を派遣したければ基本的にはJリーグ・ACLを続行したまま国内組代表を抽出して派遣することになるだろう。譲歩できる部分があるとすれば、グループステージ3試合分だけカレンダーを空けることである。3試合分1週間前後であれば、東アジアカップでカレンダーを空けた実績がある。グループステージ以降の部分はリーグを続行しながらになるだろう。また、この交渉が通じるのはJリーグまでであって、ACLの日程を動かすのはまず不可能だろう。またACL中にクラブ所属の選手がどこかに行ってしまうことについて、AFC側にどう申し開きするかは考えるべきところである(例えば、ACL出場クラブからは南米選手権に派遣しないという方法もあるだろう)。

リーグを続行しながら代表を抽出する以上はクラブに損害を与えることになるので、何らかの見返りは必要である。見返りの方法はいくつかあるだろう。直接的に見返りを出したいのであれば、南米選手権だけのスポンサーを募集し、それを原資に選手抽出クラブに保証金を払う、といったことも可能ではあろう(スポンサーがつけばの話だが)。ただし、選手の給料分程度の補填はできても、主力を抜かれたクラブの順位が下がり、最悪優勝を逃したり降格したりといった損害までは補填できないだろう。あえて言えば当該期間中の1試合につき1人抽出で得失+2、2人で勝ち点+1、3人抽出で勝ち点+1の得失+2……というようなアイデアもありうるが、適当な相場というのは分からないところである。

間接的な方法でもいいのであれば、南米選手権の放映権を獲得した放送局に、バーターとして南米選手権代表特集として1時間程度の番組を作ってもらい、JクラブでのVTRを流しまくってもらう、というのは一つの手である。別項で述べたが、胸スポンサーやピッチ看板スポンサーは、広告の文字列が何秒間テレビに出たかということを重視する。企業ロゴが1分間テレビに出れば、同じ時間帯の15秒CMに近い露出効果があり、そのCMの出稿料と同じだけの金額をクラブに投じた価値があった、と判断できるのである。またそういった番組はクラブの宣伝になるので、クラブとしては集客増につながる可能性も期待できる。これらの事情は、代表を送り出すクラブとしては間接的に利益になるだろう。またテレビ局自身にとっても、南米選手権というメインコンテンツを盛り上げるための番組宣伝の要素もあるので、その点は多少利益になるところである。少なくともアジアカップやW杯など視聴率30%超えが期待できる代表公式戦に関しては、「代表戦を盛り上げる番組」と称して1時間ほど前から番組を組み、それで15%以上の視聴率をお手軽にゲットしているので、そのような代表の集客力は上手く利用できるだろう(ただし、南米選手権は日本の深夜~早朝の開催だが)。

次世代1軍と旧世代1軍をやりくりする

年齢的に次のW杯には出ないであろう選手が何人かいる。具体的に言えば遠藤や長谷部であり、栗原・伊野波・川島らも若い世代に追い上げられる立場である。一方で、1軍の当落線上にいる若い選手もいる。例を挙げれば工藤、山口、高橋、青山、扇原らである。また選手と監督戦術の相性で呼ばれていないメンバーもおり、その代表例は2012年得点王の佐藤寿人がいる。スルガカップで南米にPK勝ちしているメンバーも悪くない。世代交代していくものとはいえ、W杯直後ではこれらのいずれも「1軍」と呼んで申し分なく、実力でもメンツを立てる意味でも代表として派遣するにふさわしい。すなわち、アジアカップと南米選手権の両方に全く同じメンバーを送ることは難しいが、「1軍」にふさわしいメンバーは実は30人ほどはおり、適当に重複しないように召集・派遣することは可能だと思われる。

ただし、繰り返しになるが、優先するのはアジアカップのほうである、ということは確実である。FIFAの設定したグレードとして全力で優勝を目指すべきことが義務付けられた大会でもあるし、アジアカップに勝てばコンフェデもついてくるし、余計なアジアカップ予選も回避できる。基本的にはアジアカップで圧勝できるだけの力を注ぎ、そこから漏れたが十分「一軍」と呼べるメンバーを集めることになるだろう。アジアカップは次回W杯の基本メンバー選定の意味合いもあるので、メンバー更新は促進される。その時に弾かれる可能性のある遠藤や長谷部、栗原らは、「1軍を送る」名目的にもよいだろう。

いずれにしても

ここまで書いてきたが、最終的には、まずJFAにやる気があるかどうかと、JFAと所属クラブの話し合いの結果によって決まるものであり、好きなメンバーを呼べるかどうかはJFA側がクラブ側に十分な見返りを提示できるかどうかにかかっている。最終的にはJFA側がどう考えているか、になるだろう。

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コパに参加できない・参加したいこれだけの理由」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ACLで勝てない理由 | είναι ταυτολογία

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