UEFAの力で代表戦は減り、Jも相対的にきつい

近年のJリーグを取り巻く環境について「スター選手流出し過ぎ」「代表が盛り上がっているのにJが盛り上がっていない」「秋春制絶対反対」「ACLは罰ゲーム」など、様々な不満が聞かれる。こういった不満を解決したいところだが、そのための下調べをしていくと、原因の多くがUEFAの金満化にある、ということにたどりつく。これについていくつかトピックを列挙していく。

*急いで書いているので資料の添付は後回しにします

要約

  1. プレミアリーグと欧州チャンピオンズリーグの営業が成功して放映権料で金満化した
  2. 欧州でもアジアでも代表選は減らされる。
  3. EPLはホリデーシーズンに稼ぐために冬をリーグ戦で埋めたい。この結果、冬を開けたいJリーグには不利なAマッチ日程が押しつけられている。
  4. UEFAがUCLを強化した結果、CLの世界再編でJリーグにとっては減益要因にしかならないACLを押しつけられ、Jの日程が過密化していてる。

本文

かくしてUEFAは金満化した

UEFAは最初から強い組織だったわけではない。1990年代、Jリーグが始まった頃は年俸が億円に達する選手は世界的に稀であり、Jリーグが2億円も積めば世界的名選手や現役ブラジル代表も呼ぶことが出来た。この状況が覆ったのは、Jリーグよりも早く他国、特に欧州リーグが金銭面で強化されためである。例えばプレミアリーグはこの20年間で5倍以上、独・西・伊・仏も3倍以上に成長しており、その期間の各国GDPよだもかなり速く成長している(下図)。この過程をもう少し詳しく検討しよう。

アジア市場の拡大

Jリーグの成功を見て、FIFAは世界市場、特にアジア市場の拡大に注力するようになる。このために1998フランス大会以降ワールドカップの枠を24から32に拡大し、アジア枠を2から4.5まで引き上げる措置をとる。日本でもドーハの悲劇以来W杯出場は悲願とされ、ワールドカップ予選は国民的関心事となった。サッカーに関する関心の拡大は日本にとどまらず、アジア全体へと波及していった。アジアカップも2004年中国大会から参加国数が12から16へと引き上げられ、2019年大会以降はさらに拡大することも既定路線となりつつある。アジアでのサッカー熱は1990年代後半から顕著に高まっており、巨大な市場を生み出している。

プレミアリーグの創設

同じ頃、欧州の主要リーグの中でイングランドのリーグはじり貧となっていた。イングランドの主要クラブはこの状況を一転させるべく、放映権で稼げるシステムを備えるプレミアリーグの創設に動く。そしてプレミアリーグは、英国系の放送網を経由することで、旧植民地で巨額の売り上げを確保することに成功した。旧英国植民地で英語が通じる地域では、他に北米、中東、南アフリカ諸国から各300億円ほどの放映権料を挙げており、これらのマネーがプレミアリーグの重要な支えになっている。プレミア人気の高いタイ、アメリカ、オーストラリアなどでは、まずプレミアリーグのクラブのサポとなり、副次的に地元クラブのサポとなるのが通例であるほどである。

epl tv deal

アジア地域においても、FIFAのアジア重視路線でサッカー人気が高まったこともありプレミアリーグの放映権は好調に推移した。その中でも、売り上げの6割超(700億円程度)をシンガポール、香港、マレーシア、インドといった元英国植民地から稼いでいる(ただし華僑系の地域では賭博需要もある)。

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チャンピオンズリーグ再編

スポーツを見る者の一つの興味の対象として、「世界最強は誰か」というものがある。これを知りたいのはある程度必然で、あえて理由を語る必要はないだろう。ここで、「世界最強決定リーグ」を作るとすればどこに作るかを考える。サッカー強豪国と言えばヨーロッパと南米であり、基本的にはUEFA内部に世界のスターの半分がいて、残りのうち一定数が南米、あとはアフリカ・北中米・アジア等に少しずつ分散している。外国人枠などの存在を考えれば、ワールドオールスターリーグの下地を作るならUEFAのリーグということになるだろう。

前述したようにアジアなどにサッカー熱が伝播し、プレミアリーグが良く見られるようになった結果として、その延長線上にある欧州チャンピオンズリーグ(UCL)も興味をもたれるようになった。UEFAはその機を逃さず、1992年から2000年代にかけて数次に渡ってCLの再編とコンテンツとしての強化を行い、世界最強決定戦としての体裁が取れるような形にした。放映権を拡大したプレミアリーグ以外にも、1990年代の残光のあったセリエAや、レアル銀河系軍団が参加できたことも魅力を引き上げた。これによりUCLはプレミアリーグと並ぶ強力なコンテンツに育ち、巨額の放映権料を得ることになった。CLの放映権料・スポンサー料を主として、UEFAの収入は05/06シーズンには総額€647mであったものが、12/13シーズンには€1697mに達している。金満化の結果として、UEFAもUCLを基板にクラブ中心のサッカーを志向するようになってきている。

金満UEFAの発言力の強さ

以上のような過程で、現在のサッカー界で一番金を持っているのはUEFAと4大リーグということになった。世の中、金を持っているほうが人を動かす力があるので、結果として一番の金持ちであるUEFAが一番発言力が強くなっている。

金銭面・レベル面でのJリーグの従属化

アジアマネーをUEFAが吸って「世界最強決定戦」を主催していることで、AFCの影響力はUEFAに比べてかなり弱くなっている。その顕著な例が欧州リーグがレベル的・金銭的に遥かに魅力が高いという状況である。まずレベルから言えばJリーグより欧州リーグのほうがレベルが高いというのが一般的な認識となっており、少なくとも4大リーグについていえばそれは確実だろう。4大リーグは豊富な資金と緩い外国人枠を使って各国代表クラスを集めており、リーグ所属選手の1/2程度がJではお目にかかれない強豪国代表クラスの選手で埋められている。

次に金銭面を見てみよう。現在のJリーグの年俸水準では、若手は1000万円前後、中堅で2500万~5000万、1億を超えるのは代表経験の豊富なベテラン勢に限られている。代表クラスであっても若手はなかなか年俸が上がらない。一方でヨーロッパに進出した場合は、当地のレベルに見合うならば、若手でも5000万円はほぼ確実であり、成績を残せば飛躍的に年俸は上がっていき、中堅クラスでも億に達するのは珍しくない。

選手にとってもここまで魅力が違う中で、「スター選手流出し過ぎ」という不満が出るのは理解できるが、止めるのは難しいだろう。欧州内でも4大リーグ以外が4大リーグに対抗するのは難しくなっており、オランダやベルギーのように完全に育成下請けと化しているところや、ポルトガルやスイスのように資金豊富なCL常連とそれ以外でレベルに大差がついているようなところも珍しくない。Jは現在オランダやベルギーのリーグのような状況になっているが、これは資金力の差とボスマン判決がもたらす必然である。

代表戦との綱引き

選手の給料を払っているのは原則クラブであり、本来協会側にAマッチ出場を強制させるような契約は結ばれていない。選手の方も、出場手当が出るのだか出ないのだか分からない代表戦に付き合うよりは、クラブの言うことに従うだろう。実際「給料のためにやっている」と公言するような選手はしばしば早期に代表引退する。

ただ、それでも代表戦は残る。はっきりとクラブが代表に優越しているのは金満化した欧州の主要クラブ程度でしかなく、アジア、アフリカ、北中米、そして南米でもクラブよりも代表のほうが人気は高い。ヨーロッパでさえ4大リーグやCL常連を除けば地元クラブはあまり強くなく、ベルギーのようなところは協会直々に「上手い選手は上位のリーグに修行に出して代表を強化する」という方針を採っているほどである。また4大リーグも、結局のところ「各国代表が集う夢のオールスターリーグ」的な売り文句で外国から視聴者を集めているため、外国の視聴者を引き付けるには「各国代表が集う」という部分を外すのは得策ではなく、サッカーそのもののプロモーションの点である程度代表に譲歩する必要が出てくる。

上記のような綱引きの結果として、ワールドカップや大陸カップを行うのに最低限必要な代表戦だけを残し、その部分はクラブ側が譲歩して選手を派遣すること、という取り決めが出来るにいたった。すなわち、Aマッチデーと拘束権である。この制度では、年間10~15試合程度「全世界で代表戦をやる日」を設定し、その期間にW杯や大陸杯の予選を行う。クラブはこの日は選手を代表に派遣しなければならない(拘束権)。そのほかにW杯や大陸杯が年間7試合程度設定され、これはAマッチデー外だが拘束権が与えられている。なお、クラブ側と協議すれば、FIFAの設定した拘束権がない日でもAマッチ(FIFAに申請した全年齢代表同士の公式戦)は可能であり、日中韓の国内組の強化試合である東アジアカップや、日本の国内組とアイスランドの国内組の親善試合などはそれに該当する。

ただし、代表戦は徐々に削減する傾向にあるのは確かで、大陸カップやW杯予選を削減するために、ヨーロッパでは親善試合を削ってUEFAネイションズリーグを創設する、アジアではW杯アジア予選とアジアカップの統合を行うなどの方向が定められている。

プレミアリーグを前提とした日程設定と過密化の流れ

プレミアリーグは、世界のサッカー放映権市場を独占すべしというほどの動きを見せており、試合をほぼ1年間休みなしで放映できるほどの過密日程を取っている。20クラブによるリーグ戦、オープン杯、リーグ杯、欧州カップを全て並列で開催し、敗退しない限りほぼ週2試合密に埋まっている状態で、事実上ターンオーバーできる2チームを持つことを前提としている。特にホリデーシーズンの過密日程はよく知られたところで、選手会側からは「クリスマスくらい家族と過ごさせろ」という意見がときたま上がるが、リーグ側としては「多くの人が家にいるホリデーシーズンこそ書き入れ時」というのが本音だろう。

巨大なマネーパワーを持つEPLに発言力があるだけに、Aマッチの日程も必然的にEPLの運営に支障をきたさない方向にせざるを得ない。現在のAマッチの流れでは、リーグ序盤の9~11月に2試合ずつ、このほか6月に大会などを固めて行う以外は、リーグが佳境に入る12~5月は避ける方向、また休養期間・移籍期間・ドサ周りPSMに充てられている7月末~8月も空ける方向となっている。冬を開けたいJリーグからすると、12~1月にAマッチを入れず6月を空ける必要があり、リーグが佳境に入る9~11月に代表戦があるプレミアリーグに合わせた日程は不満が大きい。6月にAマッチが集中している問題は、夏季中断期間が長い割にシーズンオフが短くなるなど日程的な偏りを増やす要因にもなっている。

UEFAのUCL重視は、余波としてAFCでもACLの強化が行われるという結果を生んでいる。Jはもともとリーグ戦+オープン杯+リーグ杯とあり、これに加えてACLが日程を強化してきたので、日程的には同じ構成を持つプレミアリーグに近い負担となっている。ACL出場組はリーグ杯のグループステージを免除しているが、仮にR16以上に進出すると日程的には破綻する。このような状況では、プレミアリーグ同様にある程度2軍を出していく方向性がなければ立ちゆかない。別稿で説明した通り、リーグ杯を行っていない超級やKリーグでさえ、ACLを重視する場合にはリーグ戦で2軍を出している状況であるから、それより試合数が多くなれば2軍を出すのはいたしかたないだろう。

Jリーグにとって頭が痛い問題は、試合数を減らすならACLではなく国内リーグだ、国内リーグは利益が出て捨てたくないのに対してACLはR16に勝ち進んだだけで数千万円の減益となるような出たくない大会だと言うことである。Jリーグ側から見ると、UEFAでUCLが盛り上がった結果として、ACLという困りものを押しつけられた格好となっている。

Jリーグの対策は

JリーグもUEFAの肥大化が海外からの放映権料、特にアジアからの2000億円に達する放映権料が一定の役割を果たしていることは認識しており、それを少しでも奪い取ろうとすることは「アジア戦略」という課題として明文化され、部分的に実行に移されている。アジア戦略を実行する上で最も効果的なのは「アジア最強」の地位を代表・リーグの両面で見せることであろうが、前述の通りACLが儲からないという重大な理由があるために、各クラブが儲けを追求していく結果としてACLを半ば捨てる方針を取っており、ある種のデッドロック状態に陥っている。現状Jリーグ理事会・各クラブともに期待値の低い絡め手から攻めていくしかない状況であり、早期の解決になるような決定打はなかなか打てない状況である。

確実な成長を望むならば絡め手を多数出していく必要があると思われるが、それについては別稿に記述予定である。

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