キックの駆動力の4成分

筆者は専門のサッカー指導者ではありません。筆者が逆足キックを習得するために試行錯誤した事例を残すためのものです。本稿は試稿であり、批判的なご指摘・ご意見等も常に歓迎しております。コメント欄・twitter等でお気軽にご指摘いただければと存じます。

サッカーにおけるキックは、物理学的には足先を加速してボールにぶつけ、その反作用でボールを加速する過程と言えます。足先を加速するためには足先に力を加える必要がありますが、その力を発生させるため筋肉の使い方は、大雑把に以下の4種類に区分できると考えられます。

  1. 助走
  2. 軸足
  3. 水平面トルク
  4. 矢状面トルク

実際のキックはこれら4つの成分やその他の細かい動きが組み合わされたものですが、どの力を強調するかによってキックの性質が変わってくるでしょう。本稿ではそれについて考えます。

助走

もっとも単純に速度を得る方法で、助走で得た速度はそのまま足先に乗せることができます。助走が早すぎると今度はコントロールが難しくなるため、極端に速い速度でキック体勢に入っても困りますが、誰でも使える基本の力であることは確かででしょう。

軸足成分

歩き・走りの延長線上で、体を前に進めようとするときに軸足で地面を蹴る力[参考]の反作用として生じる前向きの力を蹴り足に乗せて前向きの速度を得る方法です。軸足の太ももの後ろ側の筋肉が重要になります。キックの中ではおそらく最も基本的な力です。

軸足の作用・反作用

中西哲生氏がキックを指導した際に“軸足を抜く”ことを推奨しています。これについての私なりの解釈を書きます(念のためですが、本人に聞いたわけではないので中西氏が本当に説明したいことの通りであるとは限りません)。

足首の構造上、地面を蹴って体を前に進める力を得ようとすると、最終的に足首が伸びた状態になるはずです。例えば、立ち幅跳びをした時、まさにジャンプする瞬間を切り取るとつま先立ちになっているでしょう。これと同じように、キック時に軸足の反作用を十分に使いきろうとすると、インパクト時にちょうどつま先立ちになるはずです。つまり、軸足の駆動力を使いきっていれば自然と「軸足が抜けた」状態になる、というのが私の解釈です。

水平面トルク

下半身を軸足中心に回転させることで蹴り足を加速し、反作用を上半身を逆回転させることで生み出す成分です。

水平面トルク

体軸は左右90度ずつ回るので、最大で合計180度まで回して力を得られます。上半身のひねり角を抑えつつ反作用トルクを稼ぐために、腕を広げるのが基本となります[質量の回転半径を大きくする]。仮に手を広げないと、水平面トルクはほとんど使えない状態になりますので、キック時の力が激減します[参考]。また回転運動の特性上、軸足とボールの位置関係がずれるとあさっての方向に飛びやすいのが難点です。

水平面トルクを生むには片足(片手)を前に出しつつもう片方の足(手)を後ろに動かすような左右非対称の動きを必要とします。加えれば、手足のみならず胴体のひねりにも左右対称の動きが求められます。逆足のキックが難しいのは、この左右非対称性によるものでしょう[脚注1]。逆に言うと、意図的に腕を振ることである程度逆足のキックに慣らすことも可能です。

ニュートラルな体勢から打つと、蹴り足の逆側に簡単に打てるため、クロスに合わせる場合やカットインからのシュートでは水平面トルクを主たる動力とすることになります。

矢状面トルク

単純に言うと体を“く”の時に折り曲げる動作で蹴り足を加速する方法です。その際、腰が相対的に後ろに下がることを反作用として蹴り足と上半身を前に駆動し、蹴る直前の上半身の前のめり角度を調節することで蹴り足に生じる上向きの力を調節します。体の前側の筋肉が重要になります。これによって生じる力を積極的に利用したキックが蹴球計画で解説されている楔形のキックと言えます

矢状面トルク

水平面トルクが軸足を中心とする回転で軸足とボールの位置関係がボールコントロールで重要になるのに対して、矢状面トルクを主たる力として利用する場合は骨盤が主要な軸となるため、ボールが前にあれば軸足が多少ずれていても打てるのが強みでしょう。また走り込んできた姿勢から素早く撃つことができ、タイミングを外しやすいのも利点です。その代わり、正面方向へのキックのみに向き、クロスを90度方向を変えてに打つには向きません。また、筋肉の使い方の左右の非対称性が比較的小さいため、20代を過ぎてから逆足でのキックを習得したい場合には比較的向いている方法と言えるでしょう。

蹴る直前の上半身の姿勢で上向きの力の大きさを調節する方法は、「体をかぶせると低い弾道で打てる」という教えられ方をしているところもあり、実際最近はいわゆる“宇宙開発”と呼ばれるような現象はかなり減っているように見受けられます。ただ、それ以外にもタイミングを取りづらいキックが打てる、軸足の影響を受けにくい、逆足での習得が簡単といった利点も見逃せないでしょう。

脚注

[脚注1] 利き手・利き足のような左右非対称性が生じるメカニズムは詳しく分かっているわけではありませんが、現状で言える範囲としては、筋肉をコントロールする大脳の運動野や小脳が左右に分かれており、右半球は左半身を、左半球は右半身を支配し、筋肉を連動させるコントロールプログラムが左右別々に保存されているせいではないかというのが穏当な考えとされています。

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