AFC懲罰の相場観

まだまとめ途中なので悪しからず。

選手個人の問題

選手個人の問題は基本的に選手個人に出場停止措置が取られる。

粗暴犯

審判による命令の無視

チームの問題

チーム(選手全体+スタッフ)の問題は、基本的にクラブに罰金が科される。

試合準備不備

  • 選手リスト提出遅れ(15分)
  • 予備ゴール不備
  • 試合開始の遅延

広州恒大は選手リスト提出遅れの常習犯(累積期間中6回目)であり、初犯と比較すると約6倍であることから、違反ごとに「単位罰」とでもいうべき目安があり、累積期間中2回目以降は単位罰に累積回数を乗じた罰となるようである。

フェアプレー違反

  • Al Rayyan SC / 24 April 2017 / 試合後の握手拒否 / 罰金1千ドル

観客トラブル

観客トラブルは基本的に無観客試合の対処がとられる。

  • Eastern SC / 25 April 2017 / 観客が英国領香港の旗を持ち込む(独立運動) / 罰金1万ドル
  • Persepolis FC / 10 April 2017 / 観客席で喫煙者がいた / 罰金3千ドル
  • Persepolis FC / 8 May 2017 / 発煙筒持ち込み / 2年で4回目 / 罰金1万ドル、無観客試合1

イースタンSCの英国領香港旗の持ち込みは、以前の試合で広州恒大のサポーターがイースタンSC並びに香港分離派に対する敵意の表明として掲示した「殲英犬 滅港毒」のフラッグへの意趣返しだろう。この例を見ても、正規の国旗として公示された旗以外の国旗(旧国旗、地域旗など)は問答無用で取り締まりの対象となる可能性が高い。

 

出典

浦和・済州戦の裁定は妥当か?

ACL浦和・済州戦での乱闘騒ぎでAFC側から処分内容が発表されましたが、それを受けて現地映像(メーン側バック側)を見直してみました。

AFCの処分

今回の裁定は、かいつまんで説明すれば

  1. 浦和の選手に処罰に値する非はなし
  2. 済州の3選手の罪は重い
  3. 済州スタッフは乱闘に積極関与しておりより重い罰金。
  4. 浦和スタッフも口論で応戦しており乱闘への関与とみなす

というものです。詳細に見た場合、

  • 20番 チョ・ヨンヒョン
    • イエロー2枚で退場(47条)+退場命令無視(63条)+暴行での不品行行為(50条)
    • 6か月追放+罰金2万ドル(50条)
  • 3番 ペク・ドンギュ
    • ベンチから飛び出してエルボーで一発レッド(47条)
    • 3か月追放+罰金1万5千ドル(48条)
  • 5番 クォン・ハンジン
    • 試合後に周囲の選手に暴行でレッド(47条)
    • 罰金1千ドル(48条)
  • 済州
    • スタッフの乱闘への参加(51条)という不品行行為(50条)
    • 罰金4万ドル(50条)
  • 浦和
    • スタッフの乱闘への参加(51条)という不品行行為(50条)
    • 罰金2万ドル(50条)

となっています。今年に入ってから(第40回以降)のAFC規律委員会の処分例を見る限り、初犯ならば

  • プレー中カッとして掌で突き押した→レッド1試合出場停止+追加懲罰1試合出場停止+1千ドル
  • プレー中カッとして拳で殴った→レッド1試合出場停止+追加懲罰6試合出場停止+4千ドル

あたりが相場であり、5番の槙野追いかけ選手は相場通り、3番エルボー選手への処罰はベンチからわざわざ走ってきたことなどを加味したのか、相場から見ても例外的に重い処分と言えます。退場命令無視は3~12か月の追放が通例で、その意味では20番の選手への処罰は相場通りなのですが、それが暴行と比して重いか軽いかは皆さんの判断にお任せします。

試合後の乱闘について

試合後の乱闘については、ぱっと見チーム全体が乱闘しているように見えますが、子細に観察すると済州側の5選手が異常に興奮し、それを済州のスタッフと浦和のスタッフで止めようとしているという構図であることが分かります。特に乱闘序盤で済州の選手を止めようとしているのは済州のスタッフです(腕に白ラインのジャージが浦和、腕が無地のジャージが済州)。異常興奮していたのは以下の5名です(太字:処分済み)。

  • 37番 キム・ウォニル(試合終了直前のもみ合いでイエロー、試合後最初に槙野を攻撃)
  • 5番 クォン・ハンジン(37番のもみ合いを見て槙野を攻撃、試合後の件でレッド+追加出停1
  • 13番 チュン・ウン(槙野を最後まで追いかけた、プレーでイエロー、乱闘未処分)
  • 赤シャツ チョ・ヨンヒョン(イエロー2枚で退場、退場命令無視で乱闘まで居残る+6か月追放
  • 3番 ぺク・ドンギュ(阿部へのエルボーで退場+3か月追放、よく見ると退場後に乱闘に参加)

映像を見る限り、済州側の残りの選手・スタッフはこの5名を何とか止めようとする一方、浦和側にはなるべく離れてくれというジェスチャーを取っており、本件をこの5名による個人の犯行でありチームの残りは止めようとしていたという基準で裁けば、止めきれなかったことの責任が済州2:浦和1であることは妥当な範囲かなと思います。

この試合でのトラブルは、試合終了前の暴行+試合終了後の乱闘の2段階あるのでそれぞれ別に処分するべきだ、ゆえに試合終了後に多数が関わった乱闘の処分が甘いのではないか、という意見は分かりますが、よく見れば乱闘を主導している選手は終了前・終了後のいずれでも一緒であり、5名中3名に追加懲罰、1名はイエロー提示済みであり、8割がた片付いていると言っていいでしょう。AFCが今回示した基準に照らせば、不足していると思われるのは

  • 3番ペク・ドンギュもエルボーで退場しているのに居残って槙野を追い回しており、退場命令無視で+3か月の懲戒を受けるべきである
  • 37番キム・ウォニルと13番チュン・ウンは槙野を追いかけ、止めようとする浦和の控え選手や済州スタッフを突き飛ばすような行為があり、+1試合程度の追加懲罰を受けるべきである

あたりというのが自分の意見です。なお、この5選手は共通して槙野を狙っており、槙野にムカついていたのは確かなのでしょうが、槙野は中指突き立てやfour-letter-wordなどの明白な害意を示していないようで、挑発されたとセルフジャッジして暴行に及んだ5選手の責任は免れませんし、そもそも挑発されたと解釈してもそれは主審とマッチコミッショナーに訴え処分を求めるのが正しく(済州7番の選手はそのようにしている節があります)、暴行に及べば(仮に挑発があったとしても)その責は免れないでしょう。

チームへの処分とあるべき対処法

この5名の暴走に付き合わされて浦和が罰金を支払わされるのは理不尽である、というのはビデオを見直しても思いますし、加えれば、乱闘を主導した選手個人の罪と見るならば、この5名を羽交い絞めにして止めようとしていた済州スタッフが(管理不行き届きを咎められているという部分を除けば)あたかも乱闘に積極的に参加したかのように処分されるのは不適当であるように思いました。

本件では、AFC規律委員会が浦和・済州のスタッフ双方ともが暴走する5選手をなんとか止めようとしていたことを「乱闘への参加」であると判断した、というのも重要であると思います。私個人としてはあれは乱闘を止めようとしていた行為と取れましたし、あれが不十分であるというならAFCは「正しい乱闘の止め方」のガイドラインを提示すべきでしょう。例えば、エキサイトしている選手が多くそのままでは止めきれないとレフェリーが判断した時、レフェリー権限で両者隔離を命じ、試合後セレモニーを威圧した営業妨害で済州から浦和に200万円程度の損害賠償を命じる、といった処置であれば筋が通っているかなと思います。

これはJFAとJ理事会についても同様であり、組織としてAFCの処置に従う方針ならば、それに順じて国内チーム向けに「FIFA/AFCの裁定で乱闘に参加したとみなされない乱闘の止め方」のガイドラインを策定すべきであり、その責任があると思います。

また、済州のクラブへの処分が軽すぎるという意見もありますが、ここまで書いた通り乱闘を主導したのは5名の選手だけで残りは止めようとしていますし、FIFAの目的は「試合をさせる」ことであって、他のプレーヤーが試合をするのを妨害しようとする選手のみ致し方なく出場停止・追放処分とするものであって、今回暴走した5名を止めようとした選手の出場機会を奪うことは望ましいものではないと思います。

補足

Johor Darul Ta’zim 2017/5/31 – 退場命令無視+審判4名への反抗 → 出場停止12か月

U-20の結果が将来を決めると思ってはいけない理由

U-20ワールドカップの結果は国内でもそこそこ人気を集めていたが、この結果が将来の日本代表を直接左右するかのような発言も見受けられたので、そうではないことを説明する。

A代表の年代別代表経験者は半分程度かそれ以下

 A代表がみな年代別経験者というわけではない。例えば、2010南アW杯代表と、2017年3月の代表で見てみよう。()はU20代表経験があるが本戦未出場、*は予選敗退した年の代表を示す。

【2010南アW杯代表】
川島 03 楢崎 (95) 川口 –
中澤 - 闘莉王 - 長友 - 内田 07 駒野 01 岩政 - 矢野 –
長谷部 - 遠藤保 99 阿部 (01) 今野 (01) 稲本 99 俊輔 97 憲剛 –
松井 (01) 大久保 (01) 本田 05 森本 05 岡崎 - 玉田
U-WC 本戦出場者 8/23
U-WC 代表経験者 13/23
【2017.3アジア最終予選代表】
川島 03 西川 05 林 07
吉田 - 宏樹 - 高徳 11* 長友 - 森重 07 昌子 - 植田 13* 槙野 07
香川 07 山口 - 長谷部 - 今野 (01) 清武 - 高萩 - 倉田 - 遠藤航 11*
大迫 - 久保 13* 原口 09* 本田 05 岡崎 - 小林悠 - 浅野 - 宇佐美 11*
U-WC 本戦出場者 6/23
U-WC 代表経験者 14/23

以上のように、A代表のうちU20W杯経験者は1/3程度で、UW杯を含まないU20代表経験でさえ半分程度にとどまる。意外と少ないことが分かるだろう。

これらは、単純に早熟の選手がこちらに出て晩成した選手が後から追い抜くこともあるし、U20の大会は2学年分をまとめているため下の学年の選手が上がってくるのが遅いということもある。下の学年の選手向けに、U20の大会と同時期にU19の大会(トゥーロン国際大会)が開かれており、それなりに有力なメンバーがそちらに出ている。加えて、20歳以下でもすでにクラブで成功を収めている選手はクラブ側が出さないこともある。今回の大会で言えばフランスのムバッペはその代表格と言えるだろう。また、2001年大会のように予選の主力でありつつもクラブでの怪我から出ていない選手が大量にA代表入りするケースもある。

この中からA代表に定着するのは1~3人程度

A代表を多数輩出した黄金世代を別として、2000年以降のU20ワールドカップ代表で、年代的にW杯2大会を経験できる世代でA代表に定着した(15試合以上)メンバーを挙げてみよう。

2001年 駒野(78) 前田(33) 寿人(31)
2003年 今野(88) 川島(74) 栗原(20)
2005年 本田(88) 西川(31) 伊野波(20)
2007年 内田(74) 森重(41) 槙野(24) ハーフナー(18)
2009年 香川(86) 原口(22) 柿谷(18)

W杯に2大会以上出るようなメンバーはU20代表から世代1人、W杯に1回出られるメンバーがもう1人、アジアカップや予選でワンポイントで活躍するメンバーが+1~2人というところである。前述のようにA代表にU20W杯未経験者が多く入ってくることもあるし、U20大会は所詮は2学年分の代表なのに対しW杯は4年に1回、良い選手なら2~3大会は連続して代表に入るため、A代表はU代表2~4世代の選手間が争うさらに狭き門となっている。A代表の半分がU20代表未経験であることを鑑みれば、U20代表からA代表に残るのは1/4~1/8ということになり、U20代表からA代表に残れるのは1~3人という数字はここからくる。

また、U20代表に選ばれた選手がプロ入り後のキャリアを保証されているわけでさえない。さすがに全員プロ入りくらいはするが、J1ではぱっとせずJ2でプレーを続ける選手も1/3程度出る。U20代表に選ばれた選手がそのまま将来のA代表に反映されるということはまずない。

クジ運の影響が大きい

U20大会は2年ごとに行われ、A代表ほどみっちりランキングを決めるわけではない。したがって、事前のランキング査定も信頼のおけるものではなく、即製のものである。このため、籤運が大きく左右することもある。例えば2017年大会では日本は4チームと対戦しどの相手もにそこそこ善戦したが、グループリーグで敗退した南アフリカを除けば残り3つはベスト4に入っており、日本もクジ次第ではあと1~3は勝ちが増えただろう。しかしそれはあくまでクジ運であり、あまり気にする必要はない。

育成目的であり監督もそこそこ

U20の監督は基本的に育成畑であり、プロクラブを率いるレベルの監督は基本的に来ない。どこの境界も勝利至上主義で来ているわけではなく、その点であまり結果に拘泥する必要はないだろう。